2005/01/02(日) 「 2005 」

新年あけましておめでとうございます。


...と、明けて早々こんなことを言うのも何なんですが、ワタクシまたしても持病の方が出てしまい、情けない話なのですが現在まともに立つことすらもままならないといった状況にあります。

胸の辺りが苦しくて苦しくて、もう本当に自分でもどうしようもない状態なのです。

とりあえず新年の挨拶だけでもと思い、本日の更新を行いました。

新年のおめでたいムードに水をさすようで本当に申し訳ありません。


ということで、とりあえず目的としていた新年の挨拶も無事に済んだので、今日のところはもうお開きに...


え?病名ですか?

いや、説明すると長くなるし、多くの人にとっては退屈な話題にしかなり得ないので、病気に関しての説明はちょっと勘弁させていただきた...


え?いいから聞かせろ?

オマエには説明義務がある?


そうですか、分かりましたよ。それではこの場を借りて公表させていただきましょう。

私が抱えている病名、それは...



『 年末年始にかけて徹夜仕事が入って、で、 「 チッ!なんでいなんでい!てやんでぃべらぼーめぇ! 」 なんてやさぐれモードにて仕事終了後に帰宅。イライラしながら録画しておいた紅白とか日テレの特番なんかを見てたら、島倉千代子の "人生いろいろ" のサポート役の一人として背後で手拍子をとる梨華ちゃんの姿があまりにも可愛らしすぎたり、日テレの特番で催眠術をかけられて、死の小部屋、デス・ボックスことニワトリ小屋の中に入っていってしまうという年始早々の超絶ミラクルを拝ませてくれた梨華ちゃんの、「 うん、ダイジョウブ... 」 っていう囁きだとか自分のやっていることながら不思議がる梨華ちゃんの表情があまりにも可愛らしすぎて、「 あー、もう梨華ちゃん!何で君はそんなにもやることなすこと全てがいちいち可愛らしすぎるんだ!君の可愛らしさは全くもって規格外だよ!言葉で表現できる範疇を軽く超えているよ!マーベラスだよ!トレビアンだよ!界王拳20倍だよ! 」 とか言って、年の初めからニヘラニヘラとだらしない笑みを浮かべる男が佇む風景 』 病



です。


今年の目標は虚言癖を直すことです。

今年もよろしくお願いします。 ( 何事も無かったかのような表情で )


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2005/01/03(月) 「 hana - bi〜 side B 〜

みなさんこんばんは、powa powaです。

昨年末よりUPするするとさんざん言っておりました 『 華美 ( hana - bi ) テキスト 』 の更新を今日から開始します。

このテキストの構成は、一話完結型のストーリー仕立てとなっております。

↓それでは皆様、お手元に 『 華美 』 をご用意の上ごゆっくりとお楽しみくださいませ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

Chapter 1 ―  【 再会 】


母親に聞いた話だと僕は5歳になるまでこの島で暮らしていたらしい。


なんにも無い島。


電車も走っていなければ、携帯電話も繋がらない。


どこまでも高く青い空と、やたらとまぶしく光り輝く海とが目の前に広がっている。それ以外にはこの島には本当になんにも、なんにも無い。



15年ぶりの帰島。


まるで時が止まってしまったかのような、くたびれた古い町並み。


僕の胸をかすめる幼い頃のかすかな記憶。


潮の香り。


セミの声。


真っ青な空。


そして、隣に住んでいた女の子...


今にして思えば、幼い頃の僕は隣に住んでいたその女の子に対して、淡い恋心のようなものを抱いていたように思う。



僕は彼女の名前を思い出してみる。


『 ええと、彼女の名前は確か...いしかわ...石川... 』


15年ぶりの帰島。


照り付ける太陽、絶え間なく辺りを包む波の音。


「 ...圭吾? 」


「 .....!! 」


15年ぶりの帰島。


古い町並み、乾いた空気、どこにでもあるようなありふれたある夏の日のこと。


生まれ育ったこの島で、僕は幼馴染みの梨華と再会した ――



再会



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2005/01/04(火) 「 hana - bi〜 side B 〜

Chapter 2 ―  【 陽光 】


15年ぶりの再会。


普通であれば相手との間合いの取り方や、当たり障りの無い話題の提供等に苦心するものなのだろう。


でも僕は本当に自分でも驚くぐらいに、何の違和感も抵抗感も無く彼女との会話をごく自然体で、すんなりと楽しむことが出来ていた。


そこには15年という時間的なブランクは微塵も感じられなかった。



「 ウフフフフ... 」


「 ?? 」


会話の合間、不意に彼女が笑った。


僕は彼女の不意の微笑みの意味が理解出来ずに、首をかしげた。


「 ウフフフフ... 」


「 どうしたの? 」


僕は彼女に対してそう問いかけてみた。


「 ウフフフフ...ゴメンね。 」


「 ? 」


僕は無言のままで彼女の言葉の続きを待った。


「 圭吾が...圭吾が昔のまんまだから、なんだかワタシ嬉しくなっちゃって... 」


そう言って彼女は静かに瞳を閉じた。


「 ホント、なんか嬉しい... 」



僕にはやっと理解することが出来た。


15年という時間的な隔たり。


そんな長い時間的な隔たりを超越したところに、僕たちはあの頃の自分たちの居心地の良かった空間を、ごく自然に何の抵抗感も無く取り戻すことに成功していた。


柔らかな日差しのもと、静かに瞳を閉じる彼女の笑顔はあの頃のままだった。


そして彼女の言葉のとおり、僕の笑顔もまた、あの頃と寸分も変わらないものであったのだろう。



穏やかな午後のひととき、僕たちは失われた時間をゆっくりと、ゆっくりと巻き戻し続けた。



陽光



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2005/01/06(木) 「 hana - bi〜 side B 〜

Chapter 3 ―  【 JUMP! 】


「 ほら圭吾!遅い遅い!こっちこっち! 」


「 り、梨華!あ、危な...!ちょ、ちょっと待ってくれよぉ! 」


僕が一瞬の躊躇を覚えてひるんでいる隙に、梨華は見る見る間に先の方へと進んで行ってしまう。


「 必殺 ☆ テトラポット渡り〜♪ 」


「 り、梨華ぁ〜! 」


先ほどまで木陰で懐かしい昔話などをのんびりと楽しんでいた僕たち。そんな穏やかな静寂の時間は、梨華の 「 そうだ!海に行こうっ! 」 という一言によって脆くも打ち破られてしまった。


「 ね、圭吾!行こう、行こう!昔みたいに砂浜で一緒に遊ぼう! 」


一度言い出したらなかなか後には引かない、そんな梨華の昔からの性格を僕は嫌というほどよく知りすぎていた。



むき出しのザラザラした質感の白いテトラポットの上を、華麗にジャンプして渡り歩いていく梨華。


一方の僕はと言えば、見るも無残なヘッピリ腰で梨華の後ろ姿を必死になって追いかけ続ける。


「 フー...フー...疲れた疲れた... 」


日頃の運動不足が祟ってか、僕は両手をひざについて肩で息をしてその場に留まる。


「 もう!圭吾ったらだらしがないんだからぁ!もっとこう華麗にジャンプしないと! 」


僕が顔を上げると、いつの間に戻ってきたのか梨華が僕の傍らに立っていた。


「 そんなこと言ったってさぁ... 」


「 もう!泣きごと言わない!ほらぁ、ジャーンプ、ジャンプゥ〜♪ 」


そう言って梨華は僕の目の前で華麗な跳躍を見せる。



JUMP!



眩しい空に向かって真っ直ぐにジャンプする梨華。


華麗な跳躍を続ける彼女は、その場でただ黙ってジッと上を見上げることしか出来ない僕を残して、そのまま真夏の空の青の中に溶けていってしまった。



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2005/01/08(土) 「 hana - bi〜 side B 〜

Chapter 4 ―  【 Summer Wave 】


「 さ〜て、それじゃあさっそく泳いじゃおっか!? 」


「 え!?泳ぐって言っても僕たち水着なんて持ってきてないじゃない! 」


「 別に何も付けてなくたっていいでしょ? 昔はよくそうやって二人で泳いでいたじゃない? 」


「 え!?や、でもなんも無しっていうのはやっぱりちょっとさあ... 」


「 ?? 何がいけないの? 」


「 いや、何がいけないって..ほら、僕たちももう大人なんだし...やっぱり、ね... 」


「 ?? 」


梨華は解せぬといった様子で小首をかしげた。


諭すような冷静な口調で梨華にそんな風に言い聞かせた僕だったのだが、内心の方はどうだったかと言えば、胸一杯の期待感と、そして梨華に対するほんのチョッピリの罪悪感との狭間で、夜風に揺れるロウソクの炎のようにユラユラと危うく揺れ動き続けていた。



「 うんうん。僕たちももう大人なんだもの。やっぱそれなりの節度を持ってだね... 」


「 ね、圭吾... 」


「 ん? 」


僕の言葉を遮るようにして、梨華がこんな風に言葉を続ける。


「 アダムとイブは...どうして禁断の果実を食べちゃったんだと思う? 」


瞬間、梨華の瞳が怪しい光を放った。


「 悪い蛇にそそのかされたっていう話もあるけど、きっとヒトっていう生き物はね... 」


「 ( ゴクッ... ) 」


「 "しちゃいけない" って言われていることほど、やってみたくなっちゃうものなのっ! 」



"バッ!"



そういうが早いか、梨華は僕の目の前で勢い良く着ていた服を脱ぎさった。


「 ワーワーワー!! 」


僕はワケの分からない言葉を口にしながら、両方の手のひらで自分の両目を覆った。瞬間的に働いた自制心がきっと僕にそのような行動をとらせたのだろう。しかし悲しいかな、僕もやっぱりなんてことは無い、ただの一人のスケベ男にすぎなかった。


次の瞬間に僕がとっていた行動はといえば...


"チラッ..." ( ← 悲しい男のサガ )



Summer Wave



「 チッ... 」


過度の期待が覆されたことから生じる失望感から、ついそんな言葉を口にする僕。


いつの間に身に着けていたのか、梨華は花柄のシャツの下にしっかりとピンク色のビキニを着用していた...


「 "チッ" ? 」


そう言ってイタズラっぽい表情で、僕の顔を下から覗き込むようにする梨華。


「 や、なんでもないなんでもない! 」


慌てて取り繕おうとする僕。


「 やだなぁ圭吾ったら!一体何を期待しちゃってたっていうのぉ!?ね、ね、圭吾!教えてー、圭吾ー♪ 」


矢継ぎばやにそんな風に僕を攻め立てる梨華。決まりの悪くなった僕は、その場の流れに乗じて必死になって梨華のことを捕まえようと試みる。


「 待てっ! 」


梨華は僕の腕からスルリと身をかわして、してやったりという笑顔を浮かべる。


「 べーだ!圭吾のえっちぃ♪ 」


そう言って彼女は舌を出し、真っ白な砂浜へと駆け出していった。


僕の手に残った梨華の花柄のシャツは、太陽の眩しい光を反射してキラキラと輝きながら、シトラスの爽やかな香りを辺りに漂わせていた。



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2005/01/10(月) 「 hana - bi〜 side B 〜

Chapter 5 ―  【 A rainy day 】


帰島二日目。


僕と梨華はプールへとやって来ていた。


その日は朝から雨のそぼ降るあいにくの天気。プールサイドに人影はほとんど無かった。



ビキニ。


雨。


ビーチサンダル。


傘。



―― 圧倒的なミスマッチ。


しかし日常ではあまりお目にかかることの出来ないその不釣合いな不思議な構図は、何とも言えない神秘的な情緒を辺りに醸し出していた。


ビニール傘を片手にプールサイドに佇む彼女は、まるで真冬の空の下に凛として咲く一輪の花びらのようだった。



A rainy day



彼女はビニール傘を持って、ニコヤカな表情を浮かべたままで僕にこんな風に尋ねてくる。


「 ね、圭吾... 」


「 ん? 」


「 ワタシってひょっとして、見返り美人? 」


「 ハッハ! 」


「 水も滴るいい女? 」


「 ハッハッハ! 」


「 ...もうっ!笑ってばかりじゃなくて、少し位褒めてくれたっていいんじゃない!? 」


「 ハッハッハッハ! 」


「 もうっ...圭吾ったら全然分かっちゃいないんだから! 」


そう言って彼女はプール横にある休憩室の中へと入っていってしまった。


彼女が手にしていたビニール傘は、ドアの横で8月の雨にシトシトと打たれ続けた。



梨華、君は知っていただろうか?


僕が照れ隠しの笑顔を浮かべる時は、目元の笑いジワの数がいつもよりほんの少しだけ多くなるということを...


そしてその笑顔を浮かべている時に、相手の目を真っ直ぐには見れていないということを...


梨華、君はそのことを知っていただろうか?



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2005/01/12(水) 「 hana - bi〜 side B 〜

Chapter 6 ―  【 ふくれっ面のVenus 】


僕が考えていたほど梨華の機嫌は簡単には直らなかった。


彼女はプール横の休憩室の椅子に腰をかけて、頬を膨らませたまま微動だにしなかった。


「 あの〜、石川さ〜ん... 」


「 ( プンスカ ) 」


「 お〜い、梨華ちゃ〜ん... 」


「 ( プンプン ) 」


ガラス窓越しに笑顔で彼女のご機嫌を取ってみるも、梨華は眉一つ動かさずに一点をジッと見つめて頬を膨らませていた。


それでもめげずに僕は彼女のご機嫌を取り続ける。


「 お、梨華ちゃん!今日も茶色の水着をとってもセクスィーに着込なしてまんなぁ! 」


「 ...それって言葉に全っ然心がこもってないからっ! 」


「 う〜ん、それほどまでに茶色の柄が似合うのは、梨華ちゃんかコーヒー豆ぐらいのもんでんなぁ! 」


「 ...それってまっったく嬉しくないからっ! 」


「 えーーーっっと... 」


「 ( プンスカプン ) 」



シトシトと降り続ける雨が僕の体を濡らした。


『 あーあ、梨華の機嫌は直らないし、それにこの雨だよ...あぁ、本当嫌だなぁ...アメ、あめ、雨...... 』


そんなことを考えながら、僕は白く煙る空を見上げた。


『 アメ...あめ...雨...? 雨...! そーだ! 』


僕の頭の中に、あるシナリオが瞬間的に思いついた。


『 イケル!これならイケル! 』


僕はギュッとこぶしを握り締め、早速シナリオに則した台詞を口にした。


「 梨華... 」


「 ...何よ? 」


梨華がこちらを一瞥する。僕は台詞を続ける。


「 どうして今日は雨になったんだと思う? 」


「 お天気にどうしても何も無いでしょ。雨だから雨、ただそれだけでしょ? 」


「 いや、違うよ。 」


「 ......? 」


梨華は不思議そうな顔をしてコチラの様子を窺う。


シナリオ通りの展開。


助走は完璧、あとはタイミングを計って華麗に跳躍を決めるだけだ。僕は呼吸を整えていよいよキーとなる決め台詞を口にする。


「 太陽は...二ついらないだろう? 」


「 ? 」


怪訝そうな表情を浮かべる梨華。僕はなおも続ける。


「 地上で煌く太陽があまりにも眩しすぎて、今日は空にある太陽が活躍の場を失ってしまったんだよ。地上で輝く太陽があまりにも可憐で美しすぎて... 」


「 "地上で輝く太陽" ? 」


「 そう...地上で輝く太陽... 」


そう言って僕は椅子に座っている梨華をスッと指差す。


「 !! 」


一瞬驚きの表情を見せる梨華。そしてその表情は徐々に照れたような喜びの表情へと変移していった。


「 もう...しょうがないなぁ... 」


そう言って梨華はニッコリと笑みを浮かべた。


梨華の笑顔を見て、僕はこのストーリーのハッピーエンドを確信した。僕のシナリオはこのままハッピーエンドですんなりと完結するはずだった。



ところが...


「 キャッキャッキャッ... 」


想定外のキャストがここで突如として登場し、僕の背後を通り過ぎていくのを僕は反射するガラス窓越しに確認した。


想定外のキャスト ―― 、それは水着姿の可愛らしい女の子二人連れだった。


『 おっ! 』


僕は振り返ってその女の子たちの後ろ姿を目で追った。腰からヒップにかけてのやわらかなラインに僕の視線は釘付けとなった。


『 ジュルジュルジュル...えーなぁ...♪ 』


"ドンッ!"


と、その時、正面のガラス窓から振動が伝わってきた。


僕はハッとして正面の様子を恐る恐る窺ってみる。


僕の目の前にはコブシを震わせながらジッとこちらを睨んで立っている梨華の姿があった。


「 もうっ! 」


そんな風に言って梨華は、また元のふくれっ面に戻ってしまった。



ふくれっ面のVenus



雨に煙るふくれっ面のビーナス ――


ふくれっ面のビーナスの笑顔を取り戻すには、実にアイスレモンティー1杯と白玉ぜんざい2杯を要した...



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2005/01/14(金) 「 hana - bi〜 side B 〜

Chapter 7 ―  【 笑顔 】


昨日の雨がまるで嘘のように、一点の雲も無くどこまでも高く晴れ渡る青空。


15年前にこの島を離れた時も、確か今日のようによく晴れた日のことだったと僕は記憶している。



青い空。


乾いた空気。


白く伸びる飛行機雲。


そして、僕の横で泣きじゃくる梨華 ――



15年前のその当時、僕は何故に梨華がそれほどまでに悲しみに暮れて涙を流しているのかをよく理解することが出来なかった。当時の僕は当たり前のように今まで生活を共にしてきた人が、ある日を境に全く会うことが出来なくなってしまうというその事実を、現実のものとしてうまく受け止めることが出来ないままでいた。


『 会おうと思えばまたいつでも会えるのに... 』


当時5歳の僕の胸中にはそんな思いがあった。


或いはそれは、親の子供に対する教育方針の相違から生じる話の伝え方の違いが原因だったのかもしれないが、僕の胸中には "また会うことが出来る" というおぼろげな希望のようなものが、そして梨華の胸中には "もう会えない" という確かな重みを伴ったリアルな喪失感のようなものがあったのではないかと思う。


そして僕は実際に島を離れてみて初めて、いつも隣にいたはずの梨華の姿がそこになくなってしまったという事実に少なからずのショックと動揺のようなものを覚えた。


あの日この港で悲しみの涙を流した梨華。そして梨華がいなくなって初めて、別れの寂しさを痛感し暫くの間涙に明け暮れた僕。


それは果たしてどちらの方がより幸せだったのか、僕には良く分からない。


そしてそんな悲しみの感情すらもいつしかおぼろになりながら、僕は今日という日まで生きてきた。


様々な物事を覚えながら、そして様々な物事を忘れながら、僕はこの今日という日に辿り着いていた。



二度目の別れの朝、頭上にはあの日と同じように真っ白な飛行機雲が真っ直ぐに伸びていた。


そして僕の隣りには白いシャツを着た梨華の姿があった。


「 .........。 」


「 .........。 」


僕も梨華もお互いに一言も言葉を発しないまま、水平線の彼方をただジッと見つめていた。


絶え間ない波の音と時折聞こえてくる海鳥の鳴き声だけが辺りには響いていた。


「 さて...と... 」


僕は二人を包む静寂を破るようにゆっくりと腰を上げる。


梨華は座ったままの姿勢で黙って僕の方を見上げる。唇をキュッと結んで、まん丸な瞳でこちらを見上げる梨華はいつもよりほんの少しだけ幼く見えた。


「 たったの3日間だけだったけど、一緒にいられて本当に楽しかったよ。ありがとな、梨華... 」


そう言って僕は梨華のいる方へスッと右手を差し出した。


梨華は目の前に差し出された僕の手から体を少し斜めにずらして、物憂げな表情を浮かべて何も言わずに瞳を伏せる。


今再び訪れようとしている辛い別れの瞬間。


15年前と同じように、梨華の背中はその悲しみに小さく震えているように見えた。


外見こそ年相応に大人っぽくなっているようには見えたが、どれだけの歳月が流れようともやっぱり梨華は甘えん坊で、寂しがり屋な女の子のままのようだった。 普段はどんなに気丈に振舞っていても、やっぱり梨華は根本の部分に繊細な弱さを秘めた "女の子" のままだった。



僕は梨華の肩にそっと手を伸ばす。


『 何とかして彼女の気持ちを落ち着かせてやらないと... 』


僕はそんな風に考えていた。


「 ねぇ...圭吾... 」


「 ん? 」


唐突に梨華が口を開く。


僕は慌てて彼女の肩にかけかけた手を止める。梨華は頬杖をついたままの姿勢で、水平線の彼方を見つめながら言葉を続ける。


「 ねぇ...圭吾...私たちは生きている間に、あとどれだけの出会いと別れを繰り返していくんだろうね? 」


「 .........。 」


「 寄せては返す波のように、際限なく繰り返される出会いと別れの瞬間...。色々な物事がめまぐるしく移ろっていくこの世界の上で、私たちはあとどれだけの悲しみの瞬間を乗り越えていけばいいんだろうね... 」


時折強く吹く浜風に乗って、梨華の言葉は澄んだ海原の上に染み渡っていった。


僕には何も言うことが出来なかった。


『 親しい人との別れ 』


彼女の細い肩を震わせる原因を作っている張本人であるこの僕には、彼女に対して安易な慰めの言葉など掛けられようはずも無かった。僕は俯いたままの姿勢で自分の靴先をただボンヤリと見つめていた。辺りを包む波の音がこの空間の空白の時間を忙しなく埋めようとしているかのように思えて、やけに僕の耳についた。


そんな僕を尻目に梨華はなおも言葉を続ける。


「 別れの瞬間はいつだって涙が出るほど悲しい...それは本当に本当につらくて寂しい瞬間... 」


「 .........。 」


「 でも... 」


梨華はそう口にしてスッと立ち上がると僕のいる方へと振り返って、先ほどまでの様子から一転した晴れやかな表情を浮かべて、伸びやかな声と共にこんな風に口にした。


「 私たちは乗り越えていかなければならない。寂しさに震える夜も涙の朝も、もっともっと強くなるために、もっともっと自分自身のことを信じられるようになるために...私たちは...私たちは乗り越えていかなければならない。 」


そんな風に言う梨華の言葉は力強さに満ちていた。自らの心情を吐露する梨華の真っ直ぐな視線は、あの頃のかよわい "女の子" のものではなかった。そこには明確な意志と、ある種の決意を秘めた強さのようなものが感じられた。


「 圭吾... 」


「 ん? 」


梨華は風に揺れる前髪をかき上げながら、こんな風に口にする。


「 ワタシ...寂しくなんか...ないよ... 」


「 そっか... 」


「 うん...だってたとえ遠く離れていても、私たちの頭上に広がるこの空は繋がっているんだもん...いつだって、どこにいたって、私たちは同じこの空の下でお互いに頑張っているんだもん。だから...寂しくなんて... 」


そう言って梨華は空を仰ぎ、そしてニッコリと微笑みを浮かべた。



笑顔



「 .........。 」


僕は無言のままスッと右手を差し出した。


梨華は微笑みを浮かべているはずの顔を静かに伏せて、ギュッと僕の手を握り返した。



たとえ遠く離れていても、僕たちの頭上に広がるこの青い空はつながっている ――


もっともっと強くなるために、もっともっと自分自身を輝かせるために、僕たちは乗り越えていかなければならなかった。


涙を、


悲しみを、


辛い別れの瞬間を...



今はまだ、小さな明かりが灯ったばかりのほのかな恋心 ――


その小さな明かりを大切に大切に育んでいくためにも


僕たちはお互いのことを信じて、胸を張って再び巡り会える日のことを信じて


今は真っ直ぐに


ただ真っ直ぐに前を見て


それぞれの道を、それぞれの明日を歩み続けていかなければならなかった。



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2005/01/15(土) 「 hana - bi〜 side B 〜

Last Chapter ―  【 華美 】


帰りの船が出港する。


段々と小さくなる彼女の姿。



華美



太陽が彼女に恋をした。


世界が彼女に恋をした。


その空全てが彼女色に染まった。


ほのかな懐かしさを幾重にも重ね合わせた、季節を彩る幻想的な夢華美 ――



きっと僕はこの夏の出来事を、ずっとずっと忘れはしないだろう。





『 hana - bi〜 side B 〜 』 ・ 完







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...はい、ということで約2週間に渡ってお届けした 『 hana - bi〜 side B 〜 』 はこれにて終了です。

みなさま如何だったでしょうか?お楽しみいただけたでしょうか?

みなさんのご意見などを聞かせていただけると powa powa 非常に嬉しく思います。 肯定的な感想であれ否定的な感想であれ、掲示板の方に忌憚なき意見をドシドシお寄せください。


そして、毎回の更新毎にこのテキストを見るためにサイトを訪れてきてくれた方々、そして第一回目の更新日にこのテキストの話題を取り上げて下さった 『 モーヲタアワー 』 の記者の方々、みなさんに深く深く感謝します。


ありがとうございました。


そしてそして、全くもって稚拙な文章でしたが私に 『 どうしても書きたい 』 という情熱を湧き上がらせてくれた素晴らしい写真集 『 華美 』 の製作に携わられたスタッフのみなさん、そして、溢れるような躍動感と太陽のような眩しい笑顔を私たちに見せてくれた石川梨華さんに、合わせて深く深く感謝致します。


ありがとう。


本当に素晴らしい写真集をありがとう。


本当に素晴らしい時間をありがとう ――



powa powa


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2005/01/19(水) 「 足跡 」

2005年1月19日。


モーニング娘。石川梨華が二十歳の誕生日を迎えた。



僕たちは魅せられる。


彼女のひたむきさに魅せられる。


彼女のしなやかさに魅せられる。



これまでに彼女が過ごしてきた20年間。


僕たちが知っているのはその4分の1、約5年間の彼女の姿。


彼女の人生の4分の1、5年という年月。


それは世間の多くの人々に彼女の魅力を知らしめるには十分すぎる時間だった。



僕たちは魅せられる。


彼女の美しさに魅せられる。


彼女の健気さに魅せられる。



彼女にとって0からの新たなスタートとなる年、2005年。


新しいスタートを切るにあたって彼女が望んだもの。


それは 『 さらなる人気を獲得すること 』 でも 『 活動のジャンルを広げること 』 でもなかった。


新たなスタートとなるこの年に彼女が望んだもの、それは、



『 どんな時だって自分らしくありたい 』



と願う心に他ならなかった。





素直





どんな時もありのままの自分であり続けたいと願う清廉さ ――


いつだってありのままの自分で居続けたいと思うことの出来る強さ ――



石川梨華さん今日1月19日、二十歳の誕生日おめでとう。


今年もあなたの活躍を心から願っています。


あなたの幸せを心から願っています。



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2005/01/23(日) 「 ヤマガミ Bros. 」

やるなぁ山上兄弟!

マジック一つで、娘。さんたちの心をわしづかみじゃねえか!




( 〜^◇^)

( ^▽^)<カワイ〜


ノノ*^ー^)




俺は今日ほどマジックが出来りゃあイイと思った日はねえよ!


だって、ちょいちょいちょいっとマジックやってさ...




(・∀・)< てじな〜にゃっ! >(・∀・)




って言えば、あの娘。さんたちに 「 カワイイカワイイ 」 言われるんですぜダンナ!


よーし、ここは俺も一つ頑張ってみよう!

娘。さんたちにカワイイカワイイ言われるために、パパハッスルしちゃうぞ!(?)

...つってもマジックなんて小洒落たもんいきなり出来るはずもねーから、まずは 「 カワイイ 」 と言われる一番のポイントであるあの 「 にゃっ! 」 の掛け声から練習してみよう!

俺は昔から何でも形から入るほーだった!

そーだったそーだった!

おとーさんこりゃあウッカリしてた!


よーし、行くゾ!

え〜〜とっ...まずはカワイらしい笑顔を満面に浮かべてと ( ニコッ ) 、そしておもむろに...




(・∀・)<ヒゲにゃ〜にゃっ!




まてっ! 俺全然ヒゲヅラなんかじゃないしっ!

つーかこれ、ELTのいっくんが昔うたばんで既に使用済みのもんだしっ!

真似っこの真似っこはイクナイ!

もっとオリジナリティーを求めて行こうぜ、俺!

オマエはやれば出来る子のはずだ、俺!


よし、そうだな...こういうのはやっぱり前フリが結構重要だ。前フリで助走をつけて、そこから一気にトーーン!「 キャー、カワイ〜 」 ってのが俺の理想としている展開だ!

よし、じゃあ次は前フリを入れてからにしてみよう。


じゃあ行くぞ。



「 オマエの頭は... 」




(・∀・)<ヅラだ〜にゃっ!




まてっっ! 俺全然ヅラじゃないっ!

セカンドネームは確か、『 フサ山モジャ太郎くん 』 だったはずだ!

つーかこんなこと言ったらきっと娘。さんたちは...




(; ^▽^)<( ジリッ... )




なんて後ずさりするに違いないっ!引きまくるに違いないっ!

俺は 「 カワイ〜 」 って言われたいんだっ!

フェアチャイルド、ヤマガミ ・ ブラザーズに勝ちたいんだ!

梨華ちゃんにマジックを見破られるところまで上りつめたいんだぁっっ!


よし!気を取り直してもう一度だ!

やっぱり女性は働く男の姿に魅力を感じるはずだ!

だとしたらやっぱりここは、みんなに自慢出来る俺の職業でもって積極的にアピールをするしかないっ!

よーし、これならイケる!イケるはずやぁぁっ!


ほな行くでぇ。



「 オマエの職業は... 」




(・∀・)<ヒモだ〜にゃっ!




まて、落ち着け...

全然山上に勝ててねー!勝てる気がしねー!つーかむしろ自爆してる!

なんだよ、言うに事欠いて 「 ヒモだ〜にゃっ 」 って...

そんなとこ積極的にアピールしてどうすんだよ!や、アピールっつーか俺そもそもヒモじゃねーし!


つーか、やっぱり口からでまかせばっか言ってちゃいけねーんだよ。

俺はオオカミ少年になりたいんじゃねーんだよ。

ヤマガミ少年みてーになりたいんだよ。

よし、ここはいっちょ口からでまかせじゃなくって、現実に即した渋〜い決めゼリフをバシっと言ったった方がいいな。

うんうんその方がいい。やっぱりありのままの自分を素直に表現することが何よりも大切なはずだ。

よし、今のありのままの自分に見合ったセリフをと...



( 考え中 )



ん!これだ!まさに今の自分にピッタリだ!

このセリフなら娘。さんたちも 「 カワイー 」 って言ってくれるに違いない!

山上兄弟に勝てるに違いない!


よーし行くぞぉ...


深呼吸をして気持ちを落ち着かせてと...



( スーハー )



コホン!じゃあ行きますっ!



「 日曜の夜にこんなことを書いてる俺は... 」




(・∀・)<ヒマだ〜にゃっ!








せっっぷくぅぅ〜〜! ( ← ナウなヤングにバカうけ )


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2005/01/27(木) 「 特別講座のご案内 」


第一回まつりのあと講座。

参加方法 : ↑上記をクリック
開催地 ハロプロ専用青ノート ・ 第一講堂
開催日 2005/01/25 ( ページ下の方 )
講師 あおさん


ちなみにリスニングテープは別売りらしいです(W


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2005/01/28(金) 「 リンクを修正 」

↓リンクを修正。


『 ミカクニン情報センター 』 みつはしまさあきさん


石川さんを愛でるサイト ( 同志♪ ) 。私はみつはしさんの紡ぎだす言葉の肌触りがとても大好きです。決して着飾った言葉ではなく、自分のありのままの心情を小気味好く紡ぎだすみつはしさん。それもこれもミュージシャンとして日々培ってきた言語センス・音楽センスの賜物なのでしょう。最近powa powaさんめっきりお気に入りのサイトの一つです。


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